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AIの活用事例7選。注目の業界ごとに、AI活用の展望も解説

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AIの活用事例7選。注目の業界ごとに、AI活用の展望も解説

2025.3.27
株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一
執行役員 マーケティング部長 和田 崇

概 要

AIの活用事例は、ここ数年で日本でも広がり続けています。本コラムでは、製造業、飲食業、物流業、人材業など七つの業界で一つずつ事例を挙げ、さらには注意点や展望も解説します。

目 次

AI(人工知能)とは何か? 基本概念と現状
 ・再確認、そもそもAIとは
 ・AIの現状
ビジネスにおけるAI活用事例
 ・製造業界におけるAIの活用:化学品製造の自動運転化
 ・飲食業界におけるAIの活用:顔認証による注文システム
 ・物流業界におけるAIの活用:需要予測モデルによる横持ち計画の最適化
 ・人材業界におけるAIの活用:求人ビッグデータの解析と営業支援
 ・自動車業界におけるAIの活用:タクシー需要予測システム
 ・スポーツ業界におけるAIの活用:選手パフォーマンスの詳細解析システム
 ・医療業界におけるAIの活用:AI問診システムによる業務効率化と教育支援
AIの未来とさらなる活用可能性
 ・AI活用におけるプライバシーやモラルの懸念
 ・共存型AIの可能性
 ・「強いAI」の登場と期待
まとめ

AI(人工知能)とは何か? 基本概念と現状

はじめに、現在AIとはどのような定義に基づいて運用されているのか、基本を確認しておきましょう。

再確認、そもそもAIとは

AIとは、「知能」自体の定義がないため、研究者によりさまざまな説明がありますが、概ねは「コンピュータが人間と同様の知能を示す行動を実現するため技術やその研究分野」のことです。 具体的には、学習、推論、問題解決、近く、言語理解などの能力を機械に実装しようとする試みです。

出典:日本ディープラーニング協会監修『ディープラーニングG検定公式テキスト第3版』

AIの現状

近年、AIの進化は加速度的に進んでおり、企業や研究機関が競い合うように新しい技術を生み出しています。特に、 機械学習やディープラーニングの発展により、AIは自ら学習し、データをもとに精度を向上させる能力を持つようになりました。

高度なAIがここ数年で誰でも使えるようになったことから、ビジネスの世界でも次々と導入事例が登場しています。もはやAIなしでは、企業の成長はありえない時代に突入しているとも言えるかもしれません。

参考:NECソリューションイノベータ「AI(人工知能)とは?意味やビジネスの例も交えわかりやすく解説」f

ビジネスにおけるAI活用事例

具体的にビジネスの世界では、どのようなAI活用が行われているのでしょうか。ここでは7本のAI活用事例について、テーマ別に解説します。

製造業界におけるAIの活用:化学品製造の自動運転化

製造業ではAI技術の導入が加速し、例えば化学品製造の自動運転という革新的な取り組みが進んでいます。従来の化学プラントの運転は、熟練技術者の経験や直感に大きく依存していました。しかし近年では AIを活用した自動制御により、より精緻で効率的な運用が可能になっています。

日本触媒とNTTコミュニケーションズが進めるプロジェクトでは、連続蒸留工程にAIを導入し、運転データや操作履歴を学習させることで、プラントの自動運転を実現しました。これにより、運転の最適化、安定した生産、熟練運転員の負担軽減など、さまざまなメリットが生まれています。AIがリアルタイムで制御を調整することで、生産の安定性向上やコスト削減にも寄与しています。

この技術は化学業界だけでなく、幅広い製造業分野への応用が期待されています。熟練技術者の高齢化が進む中、技能継承の新たなアプローチとしても注目されているところです。運転の標準化や生産効率の向上を支援するAIの活用は、今後ますます重要な役割を担うでしょう。

出典:NTTコミュニケーションズ「熟練運転員の操作を学習したAIにより状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功

飲食業界におけるAIの活用:顔認証による注文システム

飲食業界では、AIを活用した顔認証システムによる注文の自動化が進んでいます。ラーメン凪では、AI技術を活用した 「顔パス」注文システム を導入して注目を集めました。

このシステムでは、店舗に設置されたiPadを使い、顔認証によって食券を購入せずに注文できる仕組みが採用されています。利用者は顔写真、生年月日、電話番号を登録するだけで会員になれるため、従来の食券販売機を使わずに注文が円滑にできます。さらに、 顔認証によって「顔パス」、つまり「このお客がいつも頼むのはこのメニュー」とシステムが認識して注文が処理されるという点も特徴的です。

この顔認証システムの目的は、リピーターの可視化とサービス向上です。店員は顔パス注文を利用するお客様が常連であることを瞬時に把握できるため、 「ありがとうございます」ではなく「いつもありがとうございます」と声をかけることができます。これにより、顧客満足度の向上や、より親しみやすい接客が可能です。

こうした取り組みは店舗への来店頻度を高め、売上の安定化につなげる効果が期待されています。今後、 顔認証による注文システムの全店展開も計画されており、AIを活用した飲食店の利便性向上と顧客管理の効率化も進んでいくでしょう。

参考:ITmedia「年間2万円で食べ放題、話題のラーメン凪 AIで「顔パス」注文システムの狙いは

物流業界におけるAIの活用:需要予測モデルによる横持ち計画の最適化

物流業界では、AI技術の導入が進み、業務効率化や精度向上が図られています。例えばアスクルは、物流センターと補充倉庫間の商品移動、いわゆる「横持ち」計画にAIを活用した需要予測モデルを導入しました。

このモデルは「いつ、どこからどこへ、何を、いくつ運ぶべきか」をAIが指示するもので、従来は担当者の経験や知見に頼って手作業で計画を立てていた部分を自動化しています。これにより、需要予測の精度が向上し、ALP横浜センターにおいては商品横持ち指示の作成工数が約75%、入出荷作業が約30%、フォークリフト作業が約15%、それぞれ削減されるという成果を挙げています。

出典:アスクル「物流センターと補充倉庫間の商品横持ち計画にAI需要予測モデルを活用

人材業界におけるAIの活用:求人ビッグデータの解析と営業支援

人材業界では、AI技術を活用した求人情報のビッグデータ解析が進んでいます。キャリア教育事業などを展開するCredo Ship.は、ウェブ上の主要な求人サイトから1日10万件以上の新規求人情報を収集し、これらのデータを効率的に活用するためのシステム開発を行っています。

同社は、求人広告代理店向けの営業支援アプリ「シエスタ」を開発しました。このアプリは膨大な求人データを基に、地域別の給与平均や業種・職種別の傾向などを分析し、営業活動を効果的にサポートするものです。

求人情報は、報酬の表記一つをとっても時給、月給、日給など多様にあり、金額の記載形式が統一されていないため、データ抽出には高度な自然言語処理技術が必要という問題を抱えています。しかしAIを活用することで、これらの情報を正確に解析し、必要なデータを自動的に抽出するシステムを構築できたということです。

この取り組みにより求人広告代理店は、データに基づいた提案や競合他社との比較が可能となり、営業効率の向上が期待されています。また、採用や人材派遣などのHR業界全般にもデータを提供し、事業の拡大に寄与しています。

出典:ZENK「求人ビッグデータのAI解析で ネット上に溢れる求人情報の新たな活用方法を開拓

自動車業界におけるAIの活用:タクシー需要予測システム

タクシー業界においては需要予測が注目されています。名古屋市を中心に展開するつばめタクシーグループは、NTTドコモと共同でAI需要予測システムを開発して導入しました。

このシステムは、携帯電話の現在地情報、過去の乗降データ、周囲の空車車両数などを基に、リアルタイムでお客様の潜在的な位置を数値化して予測するものです。AIは日々学習を重ね、その予測精度は95%以上に達しているとしています。

従来、タクシードライバーは経験や勘に頼って営業していました。そのため営業成績にはドライバー間のギャップも生まれやすかったものですが、このシステムの導入により、データに基づいた効率的な営業が可能となりました。その結果、未経験者でも収入の安定化が図られ、新人ドライバーの平均年収は433万円と、全国トップクラスを誇ります。

参考:つばめあんしんネットグループ「AI需要予測と名古屋市No.1の無線配車回数

スポーツ業界におけるAIの活用:選手パフォーマンスの詳細解析システム

スポーツ業界では、AI技術を活用した選手のパフォーマンス解析が進んでいます。サッカー選手の動きを詳細に分析するシステムとして注目されているのが「Playermaker」です。

このシステムは、選手の足首に装着する軽量なデバイスを用いて、ピッチ上での動作データを高精度に収集します。1秒間に1000回のサンプリングを行い、左右それぞれの足のタッチ数、ボール保持時の移動距離・時間、各足でのキック力など、詳細な情報を提供できるのが特徴です。

従来のGPSベースのトラッキングシステムとは異なり、Playermakerは足元に直接装着するため、より正確なデータ取得ができます。取得したデータは専用のアプリで即座に確認でき、選手やコーチがリアルタイムでパフォーマンスの分析やトレーニングの調整に役立てることも可能です。

Playermakerはサッカー以外のスポーツへの応用も進めており、バスケットボールなど他の競技でも選手の動作解析に活用されています。今後はAIデバイスを用いた、高度なスポーツサイエンスの発展も期待できるでしょう。

参考:ALLSTARS「選手の動きを徹底的に解析するシステム、Playermakerとは

医療業界におけるAIの活用:AI問診システムによる業務効率化と教育支援

医療業界でのAI活用の方法の一つに、問診システムがあります。宮城県の石巻赤十字病院では、診療の効率化を目的として「ユビーAI問診」を導入しました。

従来、患者の問診やお薬手帳の情報入力は医師が手作業で行っており、特に夜間の救急外来では業務負荷が大きな課題となっていました。そこでAI問診システムを活用することで、患者が事前に入力した問診データや服薬情報が自動的に整理され、カルテの予診作成や参考病名の提示が可能になっています。

導入から約2カ月半で、医師と看護師の作業時間が合計約44時間短縮され、1回の診察当たり約3分の時間削減を達成したとしています。医療スタッフの負担軽減につながるだけでなく、患者との対話により多くの時間を割けるようになりました。さらに、研修医の学習ツールとしても活用されており、AIが提示する病名リストを参考にしながら、鑑別診断の幅を広げることが可能です。

参考:ユビー「1回の診察あたり3分の作業時間短縮を達成。参考病名機能は研修医の学習にも有益

AIの未来とさらなる活用可能性

AIの技術革新は著しく、上記のようにさまざまな業界での活用が進んでいます。今後も、AIの可能性は現在の活用事例にとどまらず、現在の想像を超えた進展をしてもおかしくありません。それにより、さまざまな効率化だけでなく、新たな価値創出や社会問題の解決も期待されます。

AI活用におけるプライバシーやモラルの懸念

AIの進展に伴い、その利便性や可能性が注目される一方で、倫理やプライバシー保護に関する課題も浮かび上がっています。例えば、顔認証技術を活用した飲食業界のシステムでは、利用者データの管理方法が重要であり、情報流出のリスクを最小限に抑える仕組みが欠かせません。人材業界におけるAIによる求人情報解析では、適切なアルゴリズム設計が不可欠であり、データの偏りや誤った判断が採用の公平性に影響を与えないような運用が必要です。

こうした課題に対応するため、AIを導入する前に、AIに関する倫理の確立と、厳格なデータ管理ルールの策定が不可欠となります。

参考:ギグワークスタイル「AI活用で私たちのプライバシーが脅かされる?AIによる個人情報の漏洩リスクと問われる企業倫理

共存型AIの可能性

今後、AIは「共存型AI」の時代へと移行することも考えられます。つまり、単なる業務の自動化ではなく、人間とAIが協調してより良い成果を生み出す社会の実現の可能性であり、目指すべき姿の一つと捉えられるでしょう。

AIありきの意思決定やライフスタイルには当然、利点も欠点もあります。AIと共存する社会が今後どうなっていくのか、実践的に観察を続けていくべきでしょう。

参考:東京新聞「「ドラえもん型AI」もうすぐ実現? 人とAIが「共生」する未来社会って? 第一人者・栗原聡教授に聞いた

「強いAI」の登場と期待

AI技術の発展の先には、将来的な「強いAI(AGI)」の登場も予想されています。現在のAIは特定のタスクや課題解決に特化して設計されており、「弱いAI(Narrow AI)」と呼ばれています。今後は、人間の知性に近い、もしくはそれを超える柔軟な認知能力をもち、複数の課題や未知の課題に対しても柔軟に適応し、状況に応じた判断や創造的な課題解決ができるAGIの開発が進む可能性があります。

現在、AGIは登場していないと捉えられますが、生成AIやAIエージェントの進展はAGIが登場する時代を想起させます。この技術が確立されれば、AIは単なるツールではなく、より主体的に問題解決を行う存在へと進化するでしょう。

参考:RICOH「AIの種類とは?汎用型・特化型・強いAI・弱いAIの違いやできることを解説

まとめ

AIの未来には、多くの可能性が広がっています。しかしその進化を適切に管理し、社会全体にとってプラスとなるよう活用するためには、技術の発展と同時に倫理や規制の整備が求められます。今後のAI技術の進歩と、それに伴う社会の変化を見据えつつ、持続可能で有益なAIの活用方法を模索していくことが重要となるでしょう。

執筆者

マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一

中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。

執行役員 マーケティング部長 和田 崇

立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、NewsPicksプロピッカーとして活動するほか、日経クロストレンドなどメディア寄稿多数。

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