
シフト作成を自動化するAI手法|AI活用のメリットや注意点についても解説
2025.4.22
株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一
執行役員 マーケティング部長 和田 崇
概 要
シフト作成において、時間や手間、人員の確保に頭を悩ませることがあります。近年、AI技術の進化により、こうした課題を自動的に解決できるシフト作成へのAI活用が注目を集めています。本コラム では、シフト作成に活用するAIの基本的な仕組みから導入のメリット、具体的な手法や注意点まで、導入の検討の前に知っておきたい事柄を解説します。
目 次
・AIを活用したシフト作成とは
・業務効率化におけるAIの重要性
・シフト作成をする際のAIの手法
・機械学習アプローチ
・組合せ最適化アプローチ
・ルールベース・アプローチ
・AIシフト作成で実現できること
・効率的なシフト割り当て
・スタッフの負荷分散
・シフトの調整
・AIを活用したシフト作成のメリット
・スムーズな割り当てが可能になる
・法令や就業規則などを考慮できる
・割り当てミスが減る
・AIを活用したシフト作成の注意点
・イレギュラー時の対応が難しい
・運用コストが発生する
・AIを活用したシフト作成ステップ
・ステップ1:目的と課題の明確化
・ステップ2:必要データの整理と整備
・ステップ3:AIツールの選定とカスタマイズ
・ステップ4:試験運用とフィードバック
・ステップ5:本格運用と改善サイクルの構築
・まとめ
AIを活用したシフト作成とは
近年、AIの活用が進む中で、シフト作成へのAI活用も注目されています。従来のシフト作成は、担当者がスタッフの希望やスキル、法令遵守、業務量のバランスを考慮しながら手作業で行う、時間と労力のかかる作業でした。
AIを導入することで、これら複雑な条件を自動的に分析し、最適なシフトを迅速に提案できる可能性が出てきます。人為的なミスの削減や公平な割り当てが実現し、シフト作成に関わる心理的・時間的負担が大幅に軽減されます。さらに、運用を重ねることでAIは学習を続け、より精度の高いシフト作成ができることも狙えます。
業務効率化におけるAIの重要性
人材不足や業務の複雑化が進む中、企業にとって業務効率化は喫緊の課題です。そこで注目されているのが、AIの導入です。AIは膨大なデータを 学習し、 タスクの 自動化に貢献します 。特に、繰り返しの多い業務や人手に依存している作業において、AIは圧倒的な速さと精度を発揮します。
業務効率化は単なる時短だけでなく、人的ミスの削減、コア業務への集中、職場のストレス軽減といった効果ももたらします。シフト作成のように条件が多岐にわたる作業こそ、AIが得意とする分野です。効率化と品質向上を同時に実現する手段として、AIは今後さらに重要性を増していくでしょう。
参考:Concur「AI活用で業務を効率化する方法!メリット・デメリットも理解しよう」
シフト作成をする際のAIの手法
AIによるシフト作成では、目的や現場の特性に応じてさまざまな手法が使われます。ここでは、代表的な三つのアプローチを紹介します。
機械学習アプローチ
機械学習は、膨大なデータをもとにコンピュータがルールやパターンを学習する技術を指します。データによりトレーニングを行うことで、特定のタスクを高い精度でこなせるようになります。時間とともに蓄積されるデータで学習して精度を向上させることもできるため、長期的な運用で大きな効果を発揮します。
機械学習についてはこちらもご覧ください。
AIと機械学習、ディープラーニング(深層学習)の違いとは
組合せ最適化アプローチ
組合せ最適化は、その名の通り、膨大な数の組み合わせパターンから、最も効率的なパターンを探索するための数理手法です。このタスクをAIに実行させ、人手とは比較にならないほど短時間で組合せを評価・選定します。シフト作成において「希望休の考慮」「スキルや資格」「法定労働時間」など多様な制約条件が存在する場面では、シフト案を短時間で自動的に導き出せるのが大きな利点です。
組合せ最適化についてはこちらもご覧ください。
AIを活用した組合せ最適化、カギの一つは強化学習

ルールベース・アプローチ
ルールベースは、事前に決めたルールに従ってタスクを遂行するアプローチです。例えば、「Aさんは火曜と金曜は勤務不可」「連続勤務は最大3日まで」など、スタッフ個別の事情や業務ルールをそのままAIに組み込むことで、現場の要望をきめ細かく反映したシフト作成が可能になります。
特に導入初期の段階や、明確な制約条件が多い職場では、大量のデータから学習して推測をするAIよりもこちらが適している場合があります。ルールベースAIは学習を必要としないため比較的早く運用を始められ、担当者のノウハウを生かしながら効率化を図れる点も魅力です。将来的には機械学習とのハイブリッド運用に進化させて、柔軟性と最適化の両立も実現できます。
AIシフト作成で実現できること
AIを活用したシフト作成は、単なる自動化にとどまらず、組織の運営効率や従業員満足度の向上といった多面的な価値をもたらします。
効率的なシフト割り当て
シフト作成AIは、スタッフの希望、スキル、勤務可能時間、法定労働時間など、さまざまな条件を同時に考慮してシフトを自動生成します。これにより、これまで担当者が手作業で行っていた複雑な調整作業が大幅に簡素化され、数時間〜数日かかっていた作業をより短時間で完了可能です。
特に多拠点展開している企業や、変動の多いサービス業においては、スピードと精度の両面で大きな恩恵を得られます。ルールに沿った割り当てが徹底されるため、人的ミスの防止や、ミスに起因する法令違反の防止にもつながります。まさに、業務の「仕組み化」を支える力強いパートナーとなるのが、AIによる効率的なシフト割り当てです。
参考:OTASUKEMAN COLUMN「AIと数理最適化技術の違いについて解説!シフト作成で使用されるこれらの技術の特徴とは?」
スタッフの負荷分散
シフト作成AIは、過去の勤務履歴や稼働時間、各スタッフの役割やスキルレベルなどを基に、勤務の偏りを自動的に是正することができます。特定の社員に業務が集中してしまう「属人化」やオーバーワークは、離職やモチベーション低下の要因となりますが、AIを導入することで、こうした課題を可視化し、公平かつバランスの取れたシフト構成を実現できる可能性が高まります 。
柔軟な働き方を推進する企業にとっては、ワークライフバランスの確保がブランド価値や従業員満足度に直結するため、負荷分散は重要な課題です。
参考:R-SHIFT「AIによるシフト作成システム4選!AIを活用すると具体的に何ができるのか紹介」

シフトの調整
突発的な休みや人員変更が発生した際、あらかじめデータを学習したAIは即座に代替案を提示し、再調整を効率的に行うことができます。従来は、こうした変更があるたびに手動で修正を行い、全体のバランスを再計算しなければなりませんでした。しかしAIであれば、既存のルールや条件を踏まえつつ、最適な対応を迅速に実行可能です。これにより、現場の混乱を最小限に抑え、サービス品質や業務の継続性を維持できます。変化の激しい現場こそ、AIによるシフト調整の恩恵を大きく受けられる領域といえるでしょう。
AIを活用したシフト作成のメリット
AIを導入したシフト作成は、単なる「自動化」以上の価値をもたらします。業務効率だけでなく、組織全体の安定性や公平性の向上にもつながるメリットを紹介します。
スムーズな割り当てが可能になる
AIは、膨大な勤務条件やスタッフの希望を一括で処理し、最適なシフトを短時間で作成できます。従来の手作業では、「全員の希望を反映しつつ、業務に必要な人員をそろえる」といった複雑な調整が担当者に重くのしかかっていました。
AIを活用すれば、これらの条件を効率よく整理し、スムーズな割り当てを実現できます。特に、シフト作成にかかる時間を削減したい、作成精度を高めたいと考える企業にとって、AIは非常に強力な支援ツールとなります。忙しい時期や人員の流動が激しい職場でも、安定した運用が可能です。
参考:OTASUKEMAN COLUMN「AIと数理最適化技術の違いについて解説!シフト作成で使用されるこれらの技術の特徴とは?」
法令や就業規則などを考慮できる
シフト作成において、労働基準法や各社の就業規則への対応は不可欠です。AIは、これらのルールをあらかじめ組み込むことで、「連続勤務の制限」「休憩時間の確保」「勤務間インターバル」など、法令順守を自動的に担保します。
また、従業員ごとに異なる契約内容や雇用形態に対応した細かなルール設定も可能です。担当者が意図せず法令違反のシフトを組んでしまうリスクを大幅に低減でき、コンプライアンス面でも大きな安心を提供します。企業にとってAIは、正確な業務管理を支える信頼性の高いパートナーとなり得るのです。
参考:TUNAG「シフト作成におけるAIの活用方法とは?知っておきたいメリット・デメリット、おすすめツールを解説」

割り当てミスが減る
手作業によるシフト作成では、見落としや入力ミスによる割り当てエラーが避けられません。例えば「休暇取得希望を無視してしまった」「資格保持者の配置を誤った」といったヒューマンエラーは、現場の混乱や従業員の不満につながる要因となります。AIは、こうした条件の抜け漏れをシステム的にチェックし、不整合のない配置を自動で実現します。あらかじめ設定された条件に基づいて正確に動作するため、人的判断に左右されにくく、安定した運用が可能です。
AIを活用したシフト作成の注意点
AIによるシフト作成は多くの利点がありますが、すべてを自動化できるわけではありません。導入前に知っておくべき注意点を理解することで、より現実的な活用が可能になります。
イレギュラー時の対応が難しい
AIはあらかじめ設定された条件やパターンに従って動作するため、突発的なイレギュラー対応には弱さがあります。当日の急な欠勤や業務内容の変更といった「現場判断」が求められる場面では、人間のような柔軟性を発揮することは難しいのが現状です。
また、スタッフ間の信頼関係やモチベーションの機微といった“数値化できない要素”への対応も不得手です。そのため、AIは万能ではなく、あくまで「補助的なツール」として考えることが重要です。
参考:ビジネスコンシェルジュ「シフト管理にAIを活用するメリット|注意点やツールの選び方も解説」
運用コストが発生する
シフト作成AIの導入に当たっては、初期費用だけでなく継続的な運用コストも発生します。例えば、自社業務に合わせたカスタマイズ、スタッフ情報やルールの定期的な更新、トラブル時のサポート対応などが必要です。また、AIが最大限のパフォーマンスを発揮するためには、一定量のデータ整備や社内の理解促進も欠かせません。
したがって、導入に当たっては「何を目的にAIを導入するのか」「どの業務に最も効果を発揮するか」を明確にした上で、費用対効果を慎重に見極めることが求められます。
AIを活用したシフト作成ステップ
AIによるシフト作成を効果的に導入するためには、段階を踏んだ準備と運用が重要です。以下で実務での導入に役立つ具体的なステップを紹介します。
ステップ1:目的と課題の明確化
まず必要なのは、「なぜ導入するのか」「何を改善したいのか」を明確にすることです。例えば「作成時間を短縮したい」「人員配置の偏りをなくしたい」など、現場で感じている課題を言語化し、関係者間で共有することで、導入後の評価基準も明確になります。
目的があいまいなまま進めると、AIが期待通りに機能しなかった場合に判断が難しくなります。また、課題によって最適なAI手法やツールも異なるため、このステップは導入全体の方向性を定める上で非常に重要です。
参考:アシスト「AI導入はどう企画すればいい?AIの導入ステップについてわかりやすく解説」
ステップ2:必要データの整理と整備
AIが正しく機能するためには、質の高いデータが不可欠です。過去のシフト表、勤務実績、希望休、労働時間、スキル情報など、AIが判断材料とする情報を体系的に整理しましょう。
また、データの形式や粒度にばらつきがあると、AIの学習や処理に支障をきたす可能性があります。できるだけデジタルで管理された形式でデータを用意し、不足している情報があればあらかじめ補完しておくことが理想的です。さらに、データに個人情報が含まれる場合は、適切な取り扱いとプライバシー保護にも留意する必要があります。
ステップ3:AIツールの選定とカスタマイズ
市場にはさまざまなAIシフト作成ツールが存在しますが、自社の課題や業務フローに合致するものを選ぶことが大切です。汎用的なSaaS型ツールもあれば、個別にカスタマイズ可能なソリューションもあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
小規模事業所であればシンプルな操作性が重視され、大規模組織では柔軟な条件設定が求められるケースもあります。導入前には、無料トライアルやデモを活用し、実際の使い勝手や導入のしやすさを確認すると良いでしょう。
ステップ4:試験運用とフィードバック
本格導入の前には、一定期間の試験運用を実施し、実際の現場でAIがどのように動作するかを確認します。試験期間中は、担当者やスタッフからのフィードバックを収集し、操作性やシフトの妥当性、想定外の事象への対応力などを検証しましょう。
「特定の曜日に人員が偏る」「希望休が反映されない」といった問題点があれば、設定やデータの見直しが必要です。この段階で現場の理解を深め、AIへの信頼感を醸成することも重要です。スモールスタートでリスクを抑えつつ、改善点を早期に洗い出すことで、より効果的な本格運用につなげることができます。
参考:Mazrica Business Lab「AI導入の基礎知識|導入の9ステップとおすすめAIツール紹介」
ステップ5:本格運用と改善サイクルの構築
試験運用を経て本格導入に移行した後も、継続的な改善の視点が不可欠です。AIは導入して終わりではなく、使い続けるうちにデータが蓄積されそこからまた学習ができ、より最適なシフト作成が狙えます。定期的に運用状況を振り返り、「配置の偏りがないか」「現場の満足度は向上しているか」などを評価し、必要に応じて設定やルールをアップデートしましょう。

まとめ
人手に頼っていたシフト作成は、今やAIによって大きく進化しています。特に、生成AIやAIエージェントを活用することで、煩雑な条件を瞬時に処理し、最適な人員配置を提案できる時代になりました。
業務効率の向上はもちろん、従業員の満足度やコンプライアンス対応も実現できるため、企業全体の生産性を底上げする施策として有効です。今後の人材戦略において、AIによるシフト最適化は欠かせない選択肢といえるでしょう。
執筆者
マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一
中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。
執行役員 マーケティング部長 和田 崇
立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、NewsPicksプロピッカーとして活動するほか、日経クロストレンドなどメディア寄稿多数。



