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試合、トレーニング、観戦まで。進むスポーツ業界のAI活用

Laboro.AIコラム

試合、トレーニング、観戦まで。進むスポーツ業界のAI活用

2021.4.15公開 2025.3.25更新
株式会社Laboro.AI リードマーケター 熊谷勇一
執行役員 マーケティング部長 和田 崇

概 要

選手のパフォーマンスを上げる、判定の正確性を高める、観客の楽しみ方を拡張する––。スポーツ業界でのAI活用は非常に多岐にわたっています。スポーツにおけるAIの実際の活用事例を紹介します。

目 次

スポーツとAIの親和性
AIがスポーツ業界で注目されている背景
スポーツ業界でAIを活用することのメリットや価値
 ・選手のパフォーマンス分析と向上
 ・戦略立案と対戦相手の分析
 ・審判のサポートと公正性の向上
 ・怪我の予防とリハビリ支援
 ・観戦体験の向上
スポーツ×AI 実際の活用例
 ・対戦相手の分析と戦術の立案
  ・福岡ソフトバンクホークスのAI野球
 ・試合の採点支援
  ・体操競技でのAI採点
 ・選手のコーチング支援
  ・バスケットボールでのAIコーチング支援
 ・選手のケガ予測
 ・ドローンを活用した試合の追尾
 ・勝敗予想・混雑予想
  ・ディープラーニングを用いたサッカーのリアルタイム勝敗予想
  ・混雑状況の予測
 ・試合のハイライト動画を自動生成
  ・バスケチームのハイライト動画制作
 ・選手に適した献立の提案
  ・パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」
進む、スポーツ業界でのAI活用

スポーツとAIの親和性

競技結果が数値で算出されるスポーツの多くは、もともとデータ分析との親和性が高く、「ID野球」「ITサッカー」のように、今ではITによるデータ分析が欠かせなくなっています。

さらに、膨大なデータを取り扱うことを得意とし、人間では発見が難しい特徴を抽出することに長けたAIも、スポーツとの親和性が高いといわれています。例えば、AIによる画像認識技術を用いることで高いパフォーマンスを出せる動きを検出し、より効果的・効率的なトレーニングにつなげるといった活用が期待されています。

AIがスポーツ業界で注目されている背景

近年、スポーツの世界ではデータの活用が進み、選手の育成や試合の戦略策定において、AIの役割がますます重要視されています。技術の進化に伴い、リアルタイムでのデータ解析や選手の動きの精緻な分析が可能となり、これまで経験や勘に頼っていた部分を数値的な根拠に基づいて最適化することができるようになりました。

特に、センサー技術や画像認識の発展により、選手の動作解析やプレースタイルの最適化が容易になったことが、AIの導入を加速させています。

さらに、スポーツ業界ではファンエンゲージメント(関係性の強化)の向上も求められています。AIは観戦者向けのデータ提供や試合のリアルタイム解析を通じて、スポーツの楽しみ方を多様化させています。試合のライブデータの可視化や、AIを活用したハイライト映像の自動生成など、スポーツエンターテインメントの向上にも大きく貢献しています。

HALFTIME「Jリーグが最先端AIでファンエンゲージメント強化!記録的な観客動員を牽引するtoC戦略の全容

スポーツ業界でAIを活用することのメリットや価値

スポーツ業界におけるAIの活用は、具体的には以下のようなメリットが期待されています。どのような変化を業界にもたらすのか、整理します。

選手のパフォーマンス分析と向上

AIは選手の動きを詳細に分析し、最適なトレーニング方法を提案する強力なツールとして活用されています。モーションキャプチャー技術を組み合わせることで、選手の動作をミリ秒単位で解析し、フォームの改善点を明確にすることができます。

例えば、ランナーのストライドや投手の腕の振り方など、細かな動作を数値化することで、効率的なトレーニングが実現可能になります。また、バイオメカニクスを基にしたAI解析により、無駄な動きを排除し、パフォーマンスを最大限に引き出すことができるのも大きな魅力です。

戦略立案と対戦相手の分析

AIの強みの一つに、膨大なデータを処理し、パターンを見いだすことがあります。これを生かし、試合の戦略策定や対戦相手の分析においても大きな役割を果たします。

サッカーやバスケットボールでは、選手の走行距離やパス成功率、シュートの角度などのデータを蓄積し、過去の試合の傾向をAIが分析することで、最適なフォーメーションや戦術を提案できます。さらに、相手チームのプレースタイルや弱点をAIが抽出し、それに基づいた対策を講じることで、試合の勝率を上げることも狙えます。

審判のサポートと公正性の向上

スポーツの公正性を確保するために、AI技術は審判のサポートツールとしても活用されています。

テニスでは「ホークアイ」システムがすでに導入され、ボールがラインを超えたかどうかを正確に判定する仕組みが確立されています。同様に、サッカーではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によって、微妙な判定をAIが支援し、誤審のリスクを低減しています。

AIによる判定の導入は、選手やチームの納得感を高めるだけでなく、観戦者にとっても試合の透明性が向上し、公正なスポーツの実現に寄与します。

怪我の予防とリハビリ支援

AIは選手の健康管理にも活用され、怪我の予防やリハビリ支援に貢献しています。選手の動作データを分析し、過度な負荷がかかっている部位を特定することで、事前にリスクを回避する対策を講じることができます。

例えば、バスケットボール選手のジャンプ時の着地動作や、サッカー選手の走行データを解析し、怪我の原因となるパターンを特定することで、適切なトレーニングメニューを提供できます。

リハビリの分野では、AIが患者の回復状況をモニタリングし、最適なリハビリプログラムを提案することで、効率的な回復をサポート可能です。

観戦体験の向上

AIはスポーツの観戦体験をより魅力的なものへと変えつつあります。試合中にリアルタイムでデータを解析し、視聴者に対して試合の流れを可視化する機能が充実してきました。バスケットボールの試合では、シュート成功率やディフェンスの動きなどをグラフィカルに表示するシステムが導入されており、観戦者が戦略を深く理解できるようになっている様子が伺えます。

また、AIを活用した自動実況やプレイ分析により、初心者でも試合の流れを楽しめるようになれば、スポーツのファン層の拡大にも寄与するでしょう。

出典:ESTYLE「スポーツ業界におけるAIの活用事例15選|デメリットはある?

スポーツ×AI 実際の活用例

スポーツ業界でのAI活用は、試合やトレーニングだけでなく、さまざまなシーンで行われています。ここでは、競技シーンでの活用例、管理・監督シーンでの活用例、観戦シーンでの活用例に分けて、実際にAIが使われている事例を紹介します。

対戦相手の分析と戦術の立案

戦術面でもAIが活用できます。例えば、相手選手の動きやクセを学習・分析し、対策を立案・提案することがあります。従来もデータを用いた戦術立案は行われてきましたが、AIがリアルタイムに最適な提案することで、より勝利につなげやすい作戦を選択できる可能性があります。

福岡ソフトバンクホークスのAI野球

福岡ソフトバンクホークスは、これまで蓄積してきた膨大なデータを活用して、AIによる戦略立案に積極的に取り組む球団の一つです。

野球は、一人の選手が攻撃も守備も行うことや、ボールやバット、グローブなど複数の用具を使うこと、細かなルールが存在することなどから、選手個人の身体的能力や技術だけでなく、思考も重要なスポーツです。そのため、膨大な試合データや投球データなどをAIに学習させ、その予測結果をうまく活用することが勝利へとつながっていきます。

出典:日本経済新聞『IoT野球の神采配、ホークス躍進の秘密兵器』

試合の採点支援

どのスポーツもルールに則って競技が進行し、多くの場合、人間が審判を務め、人の目によって判定が行われます。しかし人間による判定には見落としやミスが皆無ではなく、「誤審」はすべての競技に共通する課題だといえます。

誤審を少しでも減らすためにもAIが活用されています。例えば、球技においてボールの軌道を分析・予測してボールのイン・アウトを判定する活用があります。ミリ単位のイン・アウトの判定は線審が行うには難しい場面もあり、AIによる客観的で正確な判定が役立てられています。

体操競技でのAI採点

特に人間の目では限界があるとされているのが、審判が採点をする競技です。AIによる採点を実用レベルで導入しているのが体操です。

富士通が開発した採点AIシステムは、2019年の世界選手権で初導入。レーザーによって選手の動きの3Dデータを取得し、AIが採点するシステムで、精度が高いとして高評価を受けました。

出典:nippon.com「冗談から始まった挑戦:体操競技で正式導入された「AI採点支援システム」が切り開く未来とは」

選手のコーチング支援

監督やコーチをはじめ、選手を管理する立場で見てみても、AIを活用することでこれまではできなかったコーチングが可能になってきています。

バスケットボールでのAIコーチング支援

バスケットボールでは、天井に設置された複数台のカメラが選手やボールの動きを追跡・記録し、選手ごとのシュートの成功率、シュートを打った位置の映像確認などをできるようにしたAIシステムが登場しています。

このシステムを用いることで、これまで目視で確認するしかなかったフォーメーションやシュート成功率などの記録をコンピュータがしてくれるようになり、監督は選手の状態をより正確に把握できるようになります。さらに、詳しく見たい箇所をクリックすることで録画再生するなどの機能も備えており、弱点の発見やそれを克服するためのコーチング、作戦の立案などに活用できることが期待されます。

こうしたシステムの実現を可能にしているのが、AIの一部である機械学習です。バスケットボールは小さなコートに2チームの選手が入り乱れるスポーツのため、映像による分析は困難とされていましたが、選手やボールの画像を大量に学習させることで対象をより正確に区別できるようになってきています。

出典:日本経済新聞『富士通、ITでバスケ強化 AIがコーチ補佐』

選手のケガ予測

選手のケガは選手本人にとっても、所属するチームや団体にとっても避けたいものです。ケガの予防は、基本的には選手本人やトレーナーなどが気を付けるしかありませんが、AIによるケガ予測も可能になるかもしれません。

具体的には、練習メニューや体調の記録、試合内容、過去のケガの内容や時期をAIが学習することで、ケガをしそうなタイミングを予測できる可能性があります。正確な予想はまだ先の未来のことになるかもしれませんが、ケガをしそうな習慣を改善するなどの活用が期待されています。

ドローンを活用した試合の追尾

ドローンは、人が操作するカメラでは撮れないさまざまな空撮映像を撮れるので、スポーツ観戦において高い可能性を持っています。AIによって選手を自動追尾するシステムが確立されれば、これまで追跡が難しかったレースで詳細で迫力のある映像を撮れたり、これまでにはないアングルの映像を楽しめたりといった恩恵が期待できます。

勝敗予想・混雑予想

AIはこれまでのパターンを学習することで、法則に沿って起きることをある程度は予測できます。スポーツにおいてもAIによる予測をサービスにつなげる流れが出てきています。

ディープラーニングを用いたサッカーのリアルタイム勝敗予想

機械学習の中でもディープラーニングは、より高度な学習をベースにした予測をする技術です。スポーツでの活用例として、サッカーの過去の試合データを大量に学習し、現在行われている試合の勝敗予測をするシステムが登場しています。

このAIシステムは、2019年に韓国で行われた国際試合で試験的に使用され、韓国をはじめとしたアジア各国の試合中継で放送され、試合観戦の新しい楽しみ方を観客に提供したといえます。

混雑状況の予測

特に大型のスポーツイベントが開催されると、観戦客に加えて関係スタッフやボランティアも含めて会場周辺は混雑し、大会の進行や地域住民への影響が懸念されることがあります。

混雑緩和のために期待されているのが、スマートフォンなどの移動通信システムから取得されるデータを基にした、AI予測と公共交通機関との連携です。スマートフォンの位置情報データから集積の多い場所を予測・抽出し、公共交通機関の利用状況と連携することで迂回ルートを提案するといったことが可能にもなります。

大型のスポーツイベントとしては2021年に東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されました。その実施に先立ち、駅の混雑状況を分析した事例があります。中央大学の田口東教授による研究で、競技場の最寄り駅においてピーク時には乗客数が約6倍になるなどの予測が立てられました。スポーツ観戦では大人数が移動することが付随するので、混雑予測などで人々の安全と暮らしやすさを守ることが重要です。

出典:NTTデータ数理システム「人流シミュレーションによるオリンピック開催時の駅の混雑分析事例」

試合のハイライト動画を自動生成

試合のハイライト映像をAIが作成するシステムも登場しています。試合中継のハイライト映像は、従来は試合中に人力で製作されてきましたが、このシステムでは選手の動きや観客の歓声を分析することで、ハイライト映像を生成します。

出典:ITmedia NEWS「勝利の鍵はAI? スポーツとデータ分析の相性が良い理由」
  :OLYMPIC CHANNEL「プロ野球に“AI解説者”が登場、体操界では3D技術の導入で判定に革命【スポーツのデジタル化】」

バスケチームのハイライト動画制作

AIによるハイライト動画制作の実例として、NTTドコモが3人制バスケットボールリーグ「3×3.EXE PREMIER」と開発したシステムがあります。このシステムでは選手やチーム、試合などの条件を選択することで、その選択に合わせたハイライト動画を製作できるとしています。

出典:ITmedia NEWS「AIで試合のハイライト動画を自動生成 NTTドコモが3人制バスケリーグ参加チームに提供」

選手に適した献立の提案

優れたスポーツ選手となるには食事も重要です。その食事の献立を提案するためにも、AI技術が活用されています。

パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」

「勝ち飯®AI」は、Laboro.AIが開発を支援した献立提案アプリです。このアプリでは、アスリートが入力したデータを分析し、個々人に最適化した献立を提案します。

これはトップアスリートを支援してきた食事のノウハウをベースにしており、一般アスリートや部活生にも高いレベルの食事管理を提供する目的で作られています。

このプロジェクトについて詳しくは、以下のページをご覧ください。
パーソナライズ献立提案「勝ち飯®AI」

進む、スポーツ業界でのAI活用

スポーツ業界でのAI活用は、競技、監督、観戦などさまざまなシーンで多様に活用され始めています。特にデータ分析や画像認識分野は、各種のスポーツと相性が良く、今後さらなる浸透が期待されます。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催も背景に、スポーツ業界におけるAIは数年で大きな進化を見せていくはずです。

執筆者

マーケティング部 リードマーケター 熊谷勇一

中央大学文学部卒業、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了。日本経済新聞社など日経ブランド企業で16年以上、雑誌、書籍、ウェブサイト、動画などの編集・執筆を手掛けた後、2022年からLaboro.AIに参画。

執行役員 マーケティング部長 和田 崇

立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、NewsPicksプロピッカーとして活動するほか、日経クロストレンドなどメディア寄稿多数。

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